ヘルペスはウイルス性の皮膚の感染症です。
正確には単純ヘルペスと呼ばれ、単純ヘルペスウイルスが原因となって起こります。
このウイルスは非常に感染力が強いため、大半の人が感染してしまいます。
しかも一度感染すると体内に棲みついていなくなる事はありません。
このため再発を繰り返してしまう事もあります。

この病気の問題点として、以下が挙げられます。

  • くり返して再発し、そのため精神的苦痛が大きい
  • 感染しても70〜80%には症状がなく、知らない内に他人に感染させてしまう
  • 妊婦から新生児への感染があると重い新生児ヘルペスを発症してしまう危険性がある
  • 性器ヘルペスの場合では性器に潰瘍ができるためHIV感染の危険性も高まる
  • 先進国、発展途上国を問わず感染者は増加の一途をたどっている

したがって運悪く感染してしまった場合には、早期対応で病状を悪化させない、人にうつさない、そして再発させない事が重要になります。

ヘルペスの症状と感染経路

この病気にかかると皮膚や粘膜の発疹や水ぶくれその後で痛みが出ます。
主に唇周囲の皮膚や口腔粘膜に発症するものと、性器周辺に発症するものが一般的で、それぞれ口腔ヘルペス、性器ヘルペスと呼ばれています。

口腔ヘルペス
まず口腔周囲に起こる場合、唇やその周りの皮膚にムズムズした感じ(掻痒感)や不快感が自覚されます。 その数時間から数日後には皮膚粘膜の赤みや水ぶくれ、口内炎ができ、かなり強い痛みが出ます。 時間の経過とともに水ぶくれは破れてかさぶたになり、2週間程度で治ります。 口腔ヘルペスの感染経路は接触(頬ずりやキス)、飛沫(くしゃみや咳による唾液や鼻水)と言われています。
性器ヘルペス
性器周囲に起こる場合、感染から2〜21日後に性器、外陰部周囲に発疹や水ぶくれができます。 強い痛みを伴う場合には排尿や歩行が困難になる事もあります。 放置すると治るまでに一ヶ月程度かかる事もあります。 性器ヘルペスの感染経路は性行為に伴う接触です。

またいずれの場合でもこのウイルスの感染力は強いので、タオルの共用でも簡単に感染してしまいます。
発疹や水ぶくれが出ている方が感染しやすい状態ではありますが、症状がなくても感染を起こす事があるのもこのウイルスの特徴です。
いずれの場合でも発疹や水ぶくれがなくなっても痛みだけがしばらく残る場合があります。
また厄介なのが発疹や水ぶくれが小さかったりなかったりする場合、つまり目に見える症状がないのにもかかわらず痛みがだけが出現して長く続く場合もあります。
このためウイルスが原因の痛みかどうかわかりにくい事もあり、対処が難しい場合があります。

原因ウイルスは口腔ヘルペスが単純ヘルペスウイルス1型、性器ヘルペスが同じく2型であると言われていますが、実際に検査してみると性器ヘルペスから1型が見つかる事も珍しくなく、厳密に区別されているわけではありません。
ただし1型よりも2型の方が再発しやすいと言われています。

初感染では高熱や全身倦怠感などの重い症状を出す事もあり、更に性器ヘルペスにおいては痛みにより歩行や排尿が困難になる事もあります。
しかし逆に発疹も水ぶくれも痛みも自覚されないというケースもあります。
このため感染と症状の関係において以下のように分類されています。

  • 急性型(初発):初めての感染により発疹や痛みが出現するもの
  • 再発型(再発):過去に症状が出た事があり、その後で体に潜んでいたウイルスが再度症状を表すもの
  • 誘発型(非初感染初発):感染はあったが何も自覚されず、その後で体に潜んでいたウイルスが初めて症状を表すもの

この中でも急性型の場合では発疹や水ぶくれの出る範囲は広く、数は多くなり、また大きなものが出現し、さらに痛みも強くなりがちと言われています。 診断には水ぶくれから直接細胞を取り、検出する方法が最も確実と言われています。
採血による検査もできますが、過去の感染による抗体も検出されるため、初感染である急性型を除いて、病態や原因ウイルスの同定はほぼ不可能です。

ストレスも関係あるの?ヘルペスの原因とは

このウイルスは感染すると、感染した皮膚や粘膜で増殖します。
ここで症状を表せば急性型になりますが、発疹や水ぶくれの有無にかかわらず増殖したウイルスはその付近にある知覚神経(感覚をつかさどる神経)に取り付き、その神経に沿って中枢(脳や脊髄)方向へ上っていきます。
そして神経節と言われる神経細胞の節のような場所に棲みつきます。
口腔領域では三叉神経節、性器周辺領域では仙髄神経節に棲みつき、潜伏状態に入ります。

潜伏した場所にとどまるとしばらく何もせずじっとしていますが、何かのきっかけがあると今度は神経を下って、感染部位に近いところで再度症状が出るのが再発です。
どのようなメカニズムで再発を起こすのかはまだ明らかにはなっていません。
ところで、「ストレスのせいでヘルペスになった」などという言葉はよく聞かれます。
この病気はウイルス性の病気なのでストレスでウイルスに感染するはずはないのですが、実際には強いストレスがかかるとヘルペスが出て来やすくなるのであながち間違いとは言えません。
正しくは「ストレスのせいでヘルペスが再発しやすくなった」なのです。

この病気を再発しやすくする要因は次のようなものであると考えられています。

免疫の低下

体の抵抗力が落ちるとウイルスは活性化し暴れ出すと言われています。
全身的な病気や免疫の病気で免疫が低下した時に再発する事は珍しくありません。
病気とはいかなくても、疲労の蓄積、ストレス、大量飲酒や寝不足も免疫を低下させます。

紫外線

紫外線は皮膚を傷めるためか、日光に当たった後に再発するケースもよくあります。
再発しやすい人は日焼け止めの使用、帽子をかぶる、皮膚露出の少ない水着を着るなど、紫外線を浴びすぎないように注意する必要があります。

性行為

皮膚粘膜が擦れて傷ができるためか疲労による免疫の低下が起こるためかよくわかっていませんが、性行為の後によく再発する、という話もよく聞かれます。

食事

アルギニンはウイルスを活性化し再発しやすくなると言われています。
チョコレート、干しぶどう、ナッツ類にはアルギニンが多く含まれているため避けたほうが良いようです。
逆にリジンはウイルスを抑制するため多く取る方が良いと言われています。
リジンを多く含むものは牛肉、チーズ、鶏肉、卵、大豆、そば、野菜全般(とくにもやし)、果物が挙げられます。

つまり、再発を防ぐには体調管理が重要であるという事になります。
具体的には、以下が挙げられます。

  • ①バランスの良い食事を心がける
  • ②ストレスを溜めない、リフレッシュする
  • ③規則正しい生活を行う
  • ④飲み過ぎには気をつける
  • ⑤紫外線対策をする
  • ⑥過度の性交渉は避ける

要するに健康な生活を送るための心がけをしっかり守れれば再発を防ぐ事ができるのです。
こういった心がけをしっかり守るのは実際には難しいものですが、できる事から少しずつでも実践する事が重要です。

ヘルペスは完治は不可能って本当?

ヘルペスに悩まされる女性この病気は完治できるか、という質問は非常に難しい問題です。
まず先ほども述べたように、このウイルスは発疹や水ぶくれなどの症状を出しながら増殖し、神経を伝って神経節に潜みます。
このためウイルスを体の中から完全に消し去る事はできません。
従って、完治という言葉が「ウイルスを体の中から根絶し症状を起こさなくする」という意味であれば不可能としか言いようがありません。

また一旦体の中から消える事があったとしても、残念ながらこの病気は全世界的に増加の一途を辿っています。
つまり再感染してしまう可能性は高くなり続けているのです。
遠い将来はともかく、現在という視点で見れば、ウイルスを体の中または外から消してなくすという事は不可能といって良いでしょう。
額面通りに受け取ればヘルペスの完治は不可能なのです。

しかしながら、発疹や水ぶくれ、痛み、そういったものを治すのはさほど難しい事ではありません。
次の項で詳しく述べますが、基本的には薬を飲むだけで数日から一週間で治ります。
急性型で発疹がひどく痛みが強い場合で入院加療が必要な場合もありますが、これも落ち着くまであまり時間はかかりません。
「病気が治って日常生活に差し支えがなくなる」のは比較的簡単ですし、それまでにかかる時間もさほどのものではありません。
髄膜炎を併発したような重症例を除けば長くても2週間程度です。

ただし水ぶくれなどはなくなり、強い痛みが無くなっても、ヘルペス後疼痛などと呼ばれる状態が続く事があります。
ピリピリと弱い痛みが長く続き、なかなか消失しないのでかなりのストレスになります。
場合によっては麻酔科やペインクリニックを受診する必要な場合もあります。
しかし大半は内服薬で徐々に治り、日常生活には影響しなくなるのであまり心配する必要はありません。

従って「発疹や痛みが治る」のはむしろ当然の事なのです。
このウイルスは常日頃、つまり潜伏期には神経節に隠れているだけで何の害もなさず、言い換えれば何もしないで静かにしています。
万一発疹や痛みが出ても適切な対処を行ってウイルスを潜伏期に戻してやれば良いだけなのです。

また、症状がなくなって一生発疹も痛みも出てない、というのも広い意味では完治と言えるかもしれません。
もともと痛くもかゆくもないのに感染している人が多いのもこの病気の特徴です。
ある製薬会社のアンケートでは「かかった事がある」と答えた人は10%程度だったそうです。
しかし国立感染研究所では成人までに50〜80%が感染している、としています。

つまり10人の人がいたとして、感染していない人が2〜3人、感染しているのに症状がない人、または気づかない程度の症状しか出ていない人が5〜8人、自覚症状があった人が1人、そんな計算になります。
ヘルペスは症状が出にくい病気でもあるのです。
再発しなければ、発疹が出なければ、水ぶくれが出なければ、痛みが出なければ、それも完治といって良いでしょう。
ヘルペスは治らない病気ではありません。

ヘルペス症状の治し方

ヘルペスを治すにはウイルスの活動を抑えるのが第一になりますが、その他にも付随する症状がありますので様々な薬が使用されます。
それぞれの症状の治し方も含め順に挙げていきます。

ウイルスそのものの活動を抑える抗ウイルス薬

急性型など日常生活もできないほど症状が強いものに対しては点滴での投与が行われます。
点滴投与の場合、一般には入院加療になります。
比較的症状が強くなく、外来通院も可能な場合には内服薬が用いられます。
薬によって服用回数が異なるので医師や薬剤師の説明を十分に聞いていただく必要があります。
症状が軽い場合、また早期の場合には軟膏が用いられることもあります。
この内市販されているのは軟膏のみですが、重篤化や長期化を防ぐためにこの病気を疑う際には病院やクリニックを受診された上で使用する薬を決定したほうが良いでしょう。

発疹や水ぶくれへの二次感染のための抗生物質

発疹や水ぶくれが破れてそこに細菌感染が生じて化膿してしまう場合があります。
こうなると痕が残ってしまう事が多いため、広い範囲に発疹などが出ている場合には抗生物質を併用する事が多くあります。
通常は内服薬で、一般的な抗生物質が用いられます。
既に化膿している場合や食事が摂りにくい場合には点滴で投与される事もあります。

発熱や痛みに対する解熱鎮痛剤

この病気は比較的強い痛みを伴う事がありますが、一般的な内服の解熱鎮痛剤で十分に効く事がほとんどです。

ヘルペス後疼痛に対する鎮痛剤など

発疹、水ぶくれ消失後に比較的軽い痛みが続く場合、神経性の痛みを緩和する鎮痛剤や漢方薬の内服が行われます。
まれに神経痛に似た強い痛みが残る事もありますが、この場合には神経ブロックなどが行われる事があります。

再発を繰り返す場合の再発抑制療法

特に性器ヘルペスで症状を繰り返す場合に用いられる方法です。
抗ウイルス薬を通常の半量程度8週〜1年程度の長期間服用し、再発を防ぎなおかつ他人への感染を防ぐという方法です。
完全に再発がなくならない場合でもその症状は軽くなり、また再発までの期間も長くなると言われています。
通常1年に6回以上再発するという場合が適用になります。

再発しにくい体内環境にする

このウイルスの特徴は人が体調を落とした時に活性化して動き始め、そして発疹や痛みを出して人を更に苦しめる、というところにあります。
逆に言えば健康でいれば活性化せず静かに潜伏しているのです。
ウイルスを活性化させないように健康維持、体調管理につとめ、いつも元気でいる事が大事なのです。

いずれの症状にも治し方、対応はちゃんとそろっている事がわかります。
ヘルペスは治らない病気でも、怖い病気でもありません。
適切な対処、対応、そして心がけをそろえていれば恐れるに足りません。
心当たりがある方、再発で困っている方は是非受診して医師に相談してください。